予約していなくても、街を楽しめる——パリで感じた、観光客を迎える余力
パリを歩いていて、いいなと思ったことがある。予約をしていなくても、その場の気分で店に入り、食事を楽しめることだ。
もちろん、今回訪れた店での経験にすぎず、パリのすべての店に当てはまる話ではない。それでも、有名な店がたくさんの客を次々と迎えている様子や、一つの店が混んでいても近くに別の選択肢がある様子に、街としての余力を感じた。
東京では、少し有名な店に行くと「ご予約はありますか」と尋ねられることがある。予約がなければ順番待ちの紙を受け取り、30組待ちということもある。楽しみにしていた店でも、そこまで待つとなると迷ってしまう。
旅行中は、すべての食事を前もって決めておきたいわけではない。歩いているうちにお腹が空くこともあれば、店先を見て入りたくなることもある。疲れ具合や天気で、予定を変えたくなる日もある。そんなとき、思いつきで入れる店があると、旅はずいぶん自由になる。
前回の記事では、パリの魅力は「名所と名所のあいだ」にもあると書いた。そのあいだを楽しくしているのは、道や景色だけではない。実際に立ち寄れる店があることも大きい。歩いて見つけ、そのまま入れる。その小さな体験が、街歩きを楽しくしてくれる。
この迎える余力は、一つの店の席数だけで決まるものではない。一つの店が満席でも、近くに行ってみたい店があれば、気分を変えてそちらへ向かえる。街全体に選択肢があることで、来訪者を受け止められる。
都市や地域の仕事では、人を呼ぶ施設やイベントに目が向きやすい。しかし、訪れた人がその前後の時間をどう過ごせるかも考えたい。食事ができるか。休めるか。予定が変わっても楽しめるか。集客する力と迎える力は、一緒に育てる必要がある。
一方で、今回のパリでも、大聖堂では入場を待つ場面があった。街のどこにでも余裕があるわけではない。祈りの場では、人数を制限することにも意味がある。場所ごとに、何を守り、どれだけの人を迎えられるかは違う。
だからこそ、混雑する一か所に人を集め続けるのではなく、周りの魅力や選択肢を伝える工夫が役に立つ。たとえば、近くの店の空き状況や、少し歩けば行ける別の見どころを、その場で知らせる。スマートシティのデータや案内の技術は、人を集めるためだけでなく、街全体で人を受け止めるためにも使えるはずだ。
予約は便利で、確実に入りたい店では頼りになる。そのうえで、予約していない時間にも楽しみがある街は、旅行者にとって心強い。
予定の隙間に見つけた店へ入り、食事をする。その自由を支えているのは、名所の周りで日々営業を続ける店と、街に積み重なった選択肢だった。
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